「広島!」展@Vacant、3月19日〜22日

書籍「なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか」刊行に合わせ、広島市現代美術館で展示中止となった作品――リアル造形の技術で実物大の丹頂鶴を制作した立体作品「リアル千羽鶴」と、騒動まで発展した、飛行機雲で「ピカッ」の三文字を描いた記録映像作品「ヒロシマの空をピカッとさせる」を3日間だけ展示いたします。http://www.mujin-to.com/cphiroshimainfo.html

さて、記録映像作品は「ピカッ」という例の三文字を数分間かけて描く様子を撮影したものでした。完成した作品を見るべきと考えてはいたものの、これは正直やや肩透かし。画像を何度も見たので感覚が麻痺していたのかな。想像していたものが想像通りに上映されていたという感じです。いや、論争的な作品は得てしてそういうもので、この過不足のなさ、空っぽさがリアルであり、間延びした牧歌的な雰囲気が逆にテーマの深刻さを浮かび上がらせているといえなくもないんですが……。
気になったのは、今回の上映が映写条件も解像度も良くなく、擬音自体が喚起するシャープな印象からは遠いこと。この擬音は本来、一瞬の閃光を表現していますから、瞬時にして全体の状況を伝えられる写真(だけ)のほうが、この作品に向いているはず。実際、記録映像には記録映像の意味があるんだろう、と視てみても、撮影時の周囲の状況や反応はとくに明かされないので、首を傾げてしまいます。

2ちゃんねるでは「CGで済むものを、なぜ?」とよく言われていたけど、たしかにこれなら写真にしろ映像にしろ、CGで済むかもしれません。「CGで描くか、飛行機をチャーターするか」。これについては予算も大違いだし、メンバー間でもそれなりに議論されたはずですから、いっそのこと、映像やテキストとして記録してあるなら、アイデアが固まる打ち合わせの様子も、そして借金してまで制作に踏み切った過程も、同時に記録&公開すればよかったのではないか……とも思うんですが、本もできたことだし、それは展示とは別の話なのでしょう。
ただ、Chim↑Pomは一貫してCGなどに頼ることなく、実践することに意味を見いだし、実際、それによってインパクトを与えてきたグループなので、わざわざ飛行機をチャーターしたことは自然にも思えます。
ちなみに、この作品では原爆を表す語として一般的な「ピカ」ではなく「ピカッ」が選ばれていますが、それは擬音の擬音らしさを強調するためというより、むしろ、ときに被爆者への差別を意味する前者の使用を避けるということなのかもしれません。
画像はwebDICE(http://www.webdice.jp/dice/detail/1020/)が中国新聞から引用したという画像の再引用と、それを加工したものです。
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なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか

なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか