『肉の唄』と『喧嘩商売』

このマンガ、もっと売れてもいいと思う。発行部数は知らないが、『ヤンマガ』の連載はあいにく打ち切られ、『別冊ヤンマガ』に移ることになった(らしい)からだ。プロレスは総合格闘技のような強さを追求する競技ではなく、それを飲み込むような虚実皮膜の発想を必要とする高度な芸術である──という理屈はだれでも分かるはず。でも、この時代、そのことを十分納得できるような成果を目の当たりにしている人は少ないんじゃないか。

肉の唄(1) (ヤンマガKCスペシャル)

肉の唄(1) (ヤンマガKCスペシャル)

肉の唄(2) (ヤンマガKCスペシャル)

肉の唄(2) (ヤンマガKCスペシャル)

自分はぺつにプロレスファンというわけでもないんだけど、総合格闘技こそ純粋で、プロレスは嘘という図式が定着しそうな風潮には抵抗を覚える。『喧嘩商売』は『肉の唄』とは別の角度で、その図式的な考え方自体の嘘くささを明らかにしていると言える。この作品は「最強の格闘技は決まってない」という命題を何度も繰り返すように、ルールなきガチンコを描きつつ、つねにそれを相対化し、しかもギャグも切り捨てない。マンガ好きの人はあまり話題にしないようだけど、週刊誌において、マンガ特有の嘘くささ、というか、いかがわしさを、これだけ濃厚に漂わせている作品は他にないと思う。それにしてもギャグマンガ家として有名な作者が、なぜ突然、喧嘩を題材にしたのだろうか。
喧嘩商売(16) (ヤンマガKCスペシャル)

喧嘩商売(16) (ヤンマガKCスペシャル)