美人は損する?

「細い体型の奥さんや恋人がいる男性は、浮気する可能性が高いことが調査により明らかになった」(AZOZ BLOG05/15/2004より。元記事=Men prefer curvy to slim
ヴィクトリア・ベッカムに同情的な記事だけど、もちろん嫉妬と羨望がベースにあるのだろう。モテる男は、競争率の高い、スリムな(きれいな)女をゲットしやすい。そしてさらに他の女ともくっつきやすい。単純な真実はそういうことだと思う。
けれど、この統計は、そのような相互に連関する確率的な現象ではなく、男という生き物の習性と女の容姿(外見)に焦点を当てている。そしてその結果が、現代の女にとって、いささか皮肉に見えつつも納得しやすいものであるならば、それは、男が女を容姿で選ぶ傾向を認めながらも──というか、認めるがゆえに、「美人は損をする」と信じたいし、男の面食いを非難したいということではないだろうか。実際「そうはいっても、やはり美人がいい」と思ったり、内面だけで相手に選ばれたと考えるのをいくらか苦痛に感じる女は少なくないはずだ。だから「美人だから浮気される(不幸になる)」とか「不美人だけど浮気はされない(幸せになれる)」といった言い訳を与えてくれるという意味で、今回の結果は、女にとって受け入れやすく、都合のいいものになりうるのだ。もちろん、このような傾向はだれのせいでもなく、現代ではそういった倫理観が支配的ということなのだろう。いかにも井上章一の『美人論』で扱われそうなテーマだ*1
さて、上のようなレトリックに比べれば、『SPA!』のホンネ主義というかバカバカしさのほうが、まだ健全かもしれない。少し前の車内吊り広告はちょっと笑わせてくれた。特集「オンナをめぐる「噂の真相」」では「69%がSEXに不完全燃焼」なんて見出しが踊っていたのだ。これがすでに一種のリトマス試験紙となっているにちがいない。69%が多いのか少ないのかとか、あるいは、この場合のSEXが成人同士の異性愛だとして、「不完全燃焼」の責任は男女どちらにあるのかとか、そんな問題が発生しそうだ。まあ、見出しに妄想をふくらませただけで、記事は読んでないんだけど、そもそも「完全燃焼って何?」という話もあるし、また「69」ってところがいかにも怪しいわけで……。ちなみに今週号の注目は「超保存版 [犬を連れてる男はモテる!]を検証してみた」かな。
*追記=ほぼ同内容の別の記事「男性は「ぽっちゃり」女性がお好き!?――スリムな女性のパートナーは浮気しがち!」http://www.japanjournals.com/dailynews/040513/news040513_3.html

*1:ちなみに同書は「美人=バカ」説の由来について論じていた。明治時代は見合いが一般的で、嫁に行けず学校に通う女が「売れ残り」、つまりブサイクとされる時代だった。それゆえ賢さ(学歴)と容姿は反比例するという「通念」も生まれたのだろう。また、当時は西欧にならって導入された文化習慣であるパーティにおいて、洗練された振る舞いの水商売系の美女たちが重宝され、玉の輿に乗る現象があらわれ、それにつれて「美人はバカだ」という風評もはびこるようになったとか。井上はそれを、容易に階級超えを実現する美人に嫉妬する、女たちの不満のガス抜きだったのではないかと分析していたと思う。