「孤独な惑星」展@水戸芸術館

「孤独な惑星」展@水戸芸術館
当人は自覚しがたい不安定なグロテスクさをカメラは容赦なく定着する。リネケ・ダイクストラRineke Dijkstraの「ビーチ・ポートレート」シリーズは、そんな「異形」に美しさを見い出しているように思える。少年少女の裸体といえば、ジョック・スタージェスJock Sturgesのヌーディスト・ビーチを舞台にした美しいモノクロ写真も有名。その自然回帰(?)シリーズと比較すると、いろいろ対照的な点が浮かび上がる。ダイクストラは地平線の見える海を背景に、海岸で所在なげに立つ十代の少年少女を、低いアングルからとらえるスタイルが特徴的だ。さらに肉体をさらけだすような過剰な──それでいて露骨な印象を残さない照明によって、被写体の存在感が控えめでありながら、確実に増幅されている。このバランスが心地よい。ただし、スタージェスの場合はモデルになった連中は「撮ってくれてありがとう」という感じかもしれないけど(もっとも彼らは人目を気にしない、どのように見られるかという関心を捨てているようにも思えるのだけど)、ダイクストラの場合はちょっと微妙かも。そういう意味では、彼のスタイルはむしろ、Richard Avedonの傑作『IN THE AMERICAN WEST』に近いだろうか。
ビル・ヴィオラは液晶ディスプレイが可能にする表現を追求しているように思えた。《航海への習作》は45分という決して短くはない上映時間の作品なのだけど、思わず見入ってしまう。液晶は高解像度であるだけでなく、目にやさしい。印象としては「動く絵画」といったところ。
昨年のヴェネツィアビエンナーレの若手作家部門で最優秀賞を獲得したニック・レルフ&オリバー・ペインOliver Payne & Nick Relphの《Mixtape》。どうもイギリス人の若者にしか分からない文脈があるようで、具体的なつっこみが難しい。エンド・クレジットの「Music by Terry Riley」には驚いた。反復的・麻薬的・快楽的なこのサウンド・トラックは、今回の作品のために提供されたようなのだけど、調べてないので詳細は不明です。テリー・ライリーといえばスティーヴ・ライヒとならぶ(?)ミニマル・ミュージックのパイオニアで、もともとたしか、ポップ・ミュージックとの親和性が高い作曲家だったような。それにしてもあのMotownの使いかたはハマる。