ジョー小泉と甲野善紀

ボクシングの伝道師ジョー小泉が、日記を書いている(「ジョー小泉のひとりごと」)。この人はとても探究心旺盛で、最近は古武術家の甲野善紀に関心があるらしい。近代スポーツの常識では理解しにくい(らしい)古武術と、もっとも洗練された対戦型近代スポーツのひとつであるボクシングとが、はたして交わることがあるのだろうか? 期待はにわかに膨らんだのだけど、ジョー小泉は講演を聞き、古武術への関心を深めたものの、意外にあっさり深追いするのはやめようと決断を下している。ようするに使えそうなところだけ採用してみようということなのだろう。

05年3月25日付けの日記では「踏み込みはつま先からか、かかとからか?」と問うている。ボクシング界では爪先ステップが「常識」だが再考の余地があるのではないか、ということらしい。これは感覚的によく分かる話だ。たとえばボクシングに意外に似ているテニスにおいてはおそらく、「爪先ステップは早い対応に、踵ステップはゆったりとした動きに」という具合に使い分けられている。より俊敏な反応が要求されるボクシングでは爪先ステップが基本だろうけど、相手の読みやタイミングを外したときは、比較的パンチに体重を乗せられる、踵ステップが有効なのかもしれない*1。こうした違いはよく見ないと分からない。よく見てもほとんど分からないことも少なくないけど、いずれにせよ、それは微妙ではあるものの、実践的にはとても大きな違いであり、そしてその違いを理解すると、選手の動きを見るのも楽しくなる。

ちなみに甲野善紀は著作も多く、話し上手でもあり、古武術の普及に熱心なようだ。巨人の桑田真澄桐朋高校バスケットボール部身体操法を教授した*2という話もある。ただし、どれだけの成果があったのかは僕はよく知らない。ともあれ、今後、ジョー小泉甲野善紀の「理論」をどう吸収するのかが気になるところだ。

*1:ちなみに爪先と踵を同時に着地させる(いわゆるベタ足)のは、かなり意識的にやらないとできない、とても不自然な動きだ。

*2:これをモデルにした漫画が『少年マガジン』に連載されていた。