プロの反則

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待った、の加藤九段を処分 異例の出場停止と罰金
 日本将棋連盟は10日、テレビ棋戦の銀河戦で「待った」の反則をした大棋士加藤一二三・九段(65)に対し、異例となる来期の同棋戦出場停止と罰金の処分を科したことを明らかにした。連盟によると、これまで「待った」による出場停止の例はないという。
 加藤九段は阿部隆八段と対局、5月末に全国のケーブルテレビなどで放送された。終盤で桂を「成らず」と指し、その直後に「成り」に着手を変更した。対局はそのまま続き、加藤九段が勝ったが、視聴者から「待った」の反則ではないか、と抗議が殺到した。
 このため理事会はビデオを取り寄せて検討した結果、反則と判断した。田中寅彦理事(9段)は「(棋士として)あるまじき行為」と語った。
 加藤九段は名人、王位、王将などタイトル獲得は8期。名人・A級に通算37年の実績を誇っている。
共同通信) - 6月10日20時18分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050610-00000236-kyodo-ent

これまでプロの試合に「待った」がなかったかというと、じつはちょっと疑問。駒から指を離し、手を下ろしてから「待った」するのは、さすがに格好悪いけど、離れた瞬間、「あ、うっかりしていた」といわんばかりに、涼しい顔で即座に指し手を変更した棋士はひとりもいなかったのだろうか? いずれにしても反則には変わりないけど、後者のように、ぬけぬけと場をしのぐ棋士もいたのではないか。それが大先生だったりしたら、周囲も注意しにくいだろう。その点、今回の「待った」がどういう「待った」なのかが気になる。
ともあれ、処分を受けたのが加藤一二三というのは、意外であると同時に、失礼だけど、なんだか納得してしまう話だ。加藤九段はかつて「神武以来の天才」「秒読みの神様」と呼ばれた、文字通り天才肌の棋士で、最近はどうか知らないけど、対戦相手の背後から盤面を覗くような奇行(マナー違反)でも有名。そのほかいろいろ有名な逸話があるのだが……と、ちょっと調べたら、ネットの世界でも今回の事件をきっかけに伝説の男となっている模様。
加藤一二三九段伝説
とはいえ本人はいたって真面目な人柄らしい。いや、だからこそ「伝説」となりうるわけだ。テレビ中継されている以上、連盟としては放置するわけにはいかなかったのだろうけど、今回の「待った」も悪質な行為というより、どちらかといえば天然のなせるワザに思えてしかたない……。