寿司屋にやってきた外国人が、

寿司屋にやってきた外国人が、旅行用ガイドブックを片手に、不安げな面もちで、寿司職人に声をかけた。
「ニホンゴ……デキル?」
明らかに日本語だったのに、職人は何を考えたか、あわてて手を横に振った。
「ニホンゴ、デキナイ」
そこへ、店を手伝っているおばちゃんが、好奇心丸出しでやってきた。
外国人はおばちゃんに助けを求めた。
「オクトパス……」
おばちゃんは一瞬硬直し、すぐそばにいた客のひとりであるタクシーの運ちゃんに話をふった。
「あら、オクトパスってなにかしら?」
「オクトパス?? 日本語か?」
運ちゃんはタコを食べていた。
僕は自分が何を食べているのか、よく分からなくなった。