『三浦和義事件 もうひとつのロス疑惑の真実』

子供だったからか当時の報道はとくに印象に残っていない。すでに終わった「祭り」という認識もあり、それほど興味もなかったのだけど、先日、生で本人が喋るところを見て気になっていたのが、この映画(http://www.walkerplus.com/movie/kinejun/index.cgi?ctl=each&id=35911)。
三浦和義は事件直後は世間的(マスコミ的)に同情されていた、という事実は意外だった。そんなことはすっかり忘れられてしまっているかもしれない。それが、自身が経営する会社の元社員による『あいつ、怪しいですよ』という執拗なタレコミをきっかけに反転した。元社員は会社の金を使い込んだために解雇されたのだが、それを恨にもっていた、と。なるほど。
そして三浦氏は、確たる証拠もないのに犯罪者のように扱われ、追いつめられていく。ただし、この作品は三浦氏の視点から描いている点は新鮮なのだけど、ドライな描き方のためか、映画というより再現ドラマのようなリアリティにとどまってしまっている。ロス疑惑報道が過熱した原因が、三浦和義という人物の「魅力」にあったのなら、無責任を承知でいえば、毒を喰らわばではないが、映画の三浦和義はもっと三浦和義的でなければ説得力がないのではないか。
DVDの特典映像には三浦氏本人が登場*1 し、取材攻勢当初の三浦夫妻の冷静な対応ぶりを描いた場面が、事実に近いと感心している。たしかに、妻がゴミ置き場に出した家庭ゴミを、マスコミの連中が引っかき回す様子を、窓から眺め、苦笑するというのは、一般人の感覚からすると拍子抜けするくらい冷静な対応だろう。裏を返せば、なぜこんなにも冷静なのかと観客には不可解かもしれない。三浦氏は当時の報道を振り返り、自分の叔母が芸能人で、自身も子供のころからカメラ慣れしており、取材に動じないところが、マスコミや視聴者の癇に障ったのかもしれない、と反省のような告白をしている。逮捕されたときは、さすがに「これで取材攻勢から自由になれる」と安堵もしたとか。
ロス疑惑とは何か?」という最後の質問に、三浦氏はこう答える。「無罪判決が下ったときの記者会見で、僕は報道陣に『あなたはあなたの会社がどのようにロス疑惑を報道したか知ってますか?』といいました。ロス疑惑とは何だったのかを、逆に問いかけたわけです。回答はまだですけどね」(要約)。結局「三浦=怪しい」という刷り込みはかんたんには消えないわけで、その意味では、本人にしてみれば「祭り」は未だに続いているのかもしれない。

*1:ちなみに収録場所は、三浦氏の妻が経営するセレクトショップみたいなかわいい店。その表には「私だってオシャレしたいも〜ん♪♪」というコピーが……。