映画

『秒速5センチメートル』三話構成の第一・二話で甘くせつない話が展開される。どんなオチがあるのかと思いきや、第三話がひどく現実的なので驚いた。『ほしのこえ』で極端に、『雲のむこう、約束の場所』で象徴的に表れ、本作の第一・二話でも際立っていた距…

『ほえる犬は噛まない』集合住宅を舞台にしたブラックコメディなので『しとやかな獣』を連想するが、それにアクションを加え、今っぽい感覚でアレンジしたような映画。二匹目の犬殺しとそれによる飼い主の死は、どう清算されたのか……。 『モーテル』盗撮がそ…

『奥さまは魔女』ノーラ・エフロン監督のロマンチックコメディ。テレビシリーズのリメイクを演じるもの同士の恋愛を描くわけだが、「演じる」といっても、主人公自身はやはり魔女、という少し複雑な構造の話。往年の人気ドラマ(ファンタジー)をどう現代劇…

噂のアイドルおたく映画

宇多丸師匠を憤慨させた映画『キサラギ』。http://podcast.tbsradio.jp/utamaru/files/20070818movie.mp3 主人公はアイドルではなく、そのファン(おたく)であり、一年前、不可解な死を遂げたアイドルを追悼する彼らの集会の一日を描くという設定。その独創…

女は二度生まれる@NFC

平日19時からの上映にもかかわらず満員。こんなに人気があるのか。上映後のトークがあるからだろうか。客層はお年寄りが6割、青年や中年が4割といったところ。 数年前ビデオで視たときは、小えん(若尾文子)の喋りと仕草のかわいさばかりに目を奪われていた…

『ラザロ』@ポレポレ東中野

「怪物が。」というキャッチコピーをはじめ、チラシなどに見られる前口上*1や前評判が気になって観に行った。 Aプロが「朝日のあたる家」、Bプロが「青ざめたる馬」と「複製の廃墟」。「マユミの誕生」「怪物マユミ」「マユミの孤独」というそれぞれのサブタ…

『殯の森』

娘妻(?)を亡くした初老の男と、息子を亡くした介護士の若い女の交流を描いていた*1。はじめはすれ違った二人もやがて打ち解け、惚けた男が子供のように女の手を焼かす。炎天下で遊ぶ場面がなかなかいい。下手をすると白けたものになりそうだし、原始的で…

『明日、君がいない』と『エレファント』

自殺をテーマにした映画『明日、君がいない』は、手法が『エレファント』にそっくりで驚いた。 後者はコロンバインの高校で起きた大量殺人を扱っている。恐ろしく美しいが、反面、こんな題材をこんな審美的に描いていいものかと複雑な気分になる映画だ。話と…

大日本人

評価、割れてますね。 http://moviessearch.yahoo.co.jp/userreview/tymv/id327082/p0/s2/ http://www.walkerplus.com/tokyo/latestmovie/mo5086.html これは役立ち度トップのレビュー。 いくつか付け加えるなら、ドキュメンタリータッチ*1にしたのは、映画…

『リンガー! 替え玉★選手権』

健常者が知的障害者になりすましてスペシャルオリンピックスに出る映画『リンガー!』。一年以上前、町山智浩がストリーム・コラムの花道で紹介していた。本題は約1/3を過ぎてから。http://tbs954.cocolog-nifty.com/st/files/st20060117.mp3……いったいどん…

下流、童貞、ドキュメンタリー

第2回ガンダーラ映画祭で上映されている『童貞。をプロデュース2〜ビューティフル・ドリーマー』がすごかった。前作ではK君という(童貞特有の?)高いプライドとヴァルネラビリティを兼ね備えた青年をAVの撮影現場に引っぱりだすという、当人にとっては魅…

『グエムル-漢江の怪物-』

リメイクならともかく、新しく怪獣が創られてしまった。しかもキャラクター製作は『ロード・オブ・ザ・リング』『キングコング』を手掛けたハリウッドのスタッフが担当している。日本の怪獣好き映画人は「やられた」と思ったに違いない。 このグエムルは、デ…

『それボク』と裁判傍聴

リアルそれボ…植草一秀の裁判を傍聴に行こうと思ったんだけど、朝が早いし、傍聴券の倍率が高いらしいので、やめました。というか起きられませんでした……。 閑話休題。『それでもボクはやってない』は逮捕から始まる捜査→起訴→公判という刑事手続き*1のシミ…

BORDER コギャルから格闘家へ

BORDER コギャルから格闘家へ ~渡辺久江 終わらぬ戦い~ [DVD]出版社/メーカー: アーティストハウス発売日: 2006/10/27メディア: DVD クリック: 20回この商品を含むブログ (1件) を見る渡辺久江ファンにとっては見逃せない、格闘技ファンにとってはなかなかの…

2006ベスト

たまにはブロガーらしいことをやろうと思う。劇場で観た数十本から、10本(5本と5本)を選んだ。一応、順不同。忘れているものもあると思うんだけど、「あれが入ってないのはオカシイ」とかいわれたら、「すみません、観てないんです」と返すしかない可能性…

“困った人”をいかに見せるか

『その男狂棒に突き』、予告編からして面白そうでした。刑事にして汁男優の中年男が初めてAVの本番の撮影に挑むという設定は、いくつかの条件が重なったすえに生まれたらしいけど、いいところを突いてますね。そしてこのアイデアに血肉を与えた主人公の「尾…

『武士の一分』が見応えはあるのに、そんなにはよくない理由

『武士の一分』、五体満足でなくなったらどうしよう、とおそらくだれもが一度は考える問題を導入にしている間口が広い映画でした。 中年にさしかかろうとしている主人公の武士は、「毒味」という自分の役目をたいして誇りに思っていないし、転職さえ考えてい…

甲野善紀身体操作術

http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=7541予告編 以前から気になっていたのだけど、動く姿を見たのは初めて。 なかなか衝撃的でした。冒頭では「起こり」を消した動きが紹介されていた。 「起こり」とは「起こりそうな気配」というべ…

中平卓馬のドキュメンタリー

http://www.cinekita.co.jp/lineup/camera.html 「カメラになった男」というタイトル、うまいすね。中平卓馬の写真は、良い/悪いとか、上手/下手とか、きれい/汚いとか、かっこいい/かっこわるいとか、そういうレベルを超えてしまっている(ように見える…

泣き虫ボクサー

一年前の深夜、「泣き虫ボクサー奇跡」という番組が放送された。気になるタイトルだったのだけど、見逃してしまった。忘れかけたころ、先週フジテレビで「タツキ 泣き虫ボクサーの死闘」というドキュメンタリーが放送された(テレビ欄のタイトルは「泣き虫ボ…

嘘を吐く映像

「ドキュメンタリーは嘘をつく」が某動画共有サイトにアップされている。こういうところで見るのはちょっと申し訳ないけど、半年前の放送は見逃していたのでありがたい。 内容はというと、一見いい加減ながら巧妙な構成は「ガキの使い」を思わせる。まあ、さ…

『ニキフォル 知られざる天才画家の肖像』

アウトサイダー・アートを、アウトサイダー・アートだから好き、といってしまうのは、間違いというか、つまらないことなのだろうけど、ニキフォルのようなアウトサイダーの作品は、どこか理性が飛んでいるように見えるという意味で、なんだか気になってしま…

『2番目のキス』〜バリモアは意外にかわいかった

待望のファレリー兄弟最新作。といっても今回はどちらかといえば「ドリュー・バリモア主演」が売りの模様。そしてバリモアがどんな女優かといえば、『25年目のキス』『50回目のファースト・キス』の主演女優である、とのこと。プレスの意向を汲んでか、「本…

『ヒストリー・オブ・バイオレンス』はやっぱりすごい

池袋の新文芸座で再見。完璧という印象をこれほど与える映画は最近ではほとんどないでしょう。単純な話ながら、覚醒したまま悪夢を見させられているような感覚を覚えます。 まず前半のうまいなあと思うところ。それぞれのショットは簡潔である一方、シーン、…

『間宮兄弟』にほのぼのする

シャツの裾をチノパンにしっかりとしまいこむ着こなしの間宮兄弟。冒頭は、なにをするにもいつも一緒、それだけで充分に楽しいという仲良しの様子が描かれる。「いい歳して、なんか気持ち悪いなあ(苦笑)」と違和感を覚えてしまったのだけど、それが嫌悪感…

「ブスの瞳に恋してる」と『愛しのローズマリー』

「ブスの瞳に恋してる」(http://www.ktv.co.jp/busu/)は、制作発表における「ブスが褒め言葉になればいい」という稲垣吾郎の発言と、ヒロインが村上知子というキャスティングが気になっていたのだけど、どうも当初の期待──といっても何を期待していたのか…

『ヒストリー・オブ・バイオレンス』はすごい

デビッド・クローネンバーグといえば変わった題材となんらかの新奇性を好む監督という印象があった。でも、50年代の西部劇を意識したという今回の作品は、物語としてはありふれているし、奇抜な表現を試みているわけでもない。にもかかわらず、とんでもなく…

『Mr.&Mrs.スミス』は何映画なのか?

ヒッチコックの『スミス夫妻』とは関係なく、たんなる美男美女の派手な夫婦喧嘩の話でした。主演の二人はコレがきっかけでアレした、みたいに、話題が先行した映画なのかもしれない。ただ、ジャンルとしてはラヴ・ロマンスから始まり、サスペンス、アクショ…

9・11と『永遠の語らい』

歴史学者の若く美しい女が、娘とともに、ポルトガルからインドへと向かう船旅に出る。その途上、各地の歴史遺産を前に、ふたりは西洋史についての対話(というか娘は訊いてばかりなのだけど)を重ねていく。目的地ボンベイではパイロットの夫が待っていると…

トニー・スコットの会心作(?)『マイ・ボディーガード』

兄リドリー・スコットは芸術家肌、弟トニー・スコットは大衆路線の監督。おそらく世間的にはこんな図式で考えられている。それはたぶん間違っていないし、僕もそんなふうに考えていた。だいたいトニー・スコットの映画は「ああ、あれってそうなの?」と監督…