『ラザロ』@ポレポレ東中野

「怪物が。」というキャッチコピーをはじめ、チラシなどに見られる前口上*1や前評判が気になって観に行った。
Aプロが「朝日のあたる家」、Bプロが「青ざめたる馬」と「複製の廃墟」。「マユミの誕生」「怪物マユミ」「マユミの孤独」というそれぞれのサブタイトルから推測できるように、プログラムは物語の時系列順。が、制作順は「青ざめたる馬」「複製の廃墟」「朝日のあたる家」か?
Aプロ。グローバリゼーションによって、すっかり色褪せ、まるで活気の感じられない地方の風景描写と台詞を抑えた場面をベースにした進行に、姉の恋人の話をきっかけとする姉妹の衝突や、「大店法が」「アメリカが」「悪いのは……」などと繰り広げられる饒舌なやりとりが挿入される。シーン自体も、構成も、なんだか生硬でぎこちないが、これが妙な緊迫感をもたらしているように見える。あまり巧くはないが、それがかえってリアルというか。こうして惑わされるためか、物語的には、振り返ってみれば、なるほどそりゃそうなるよなと言いたくなるような展開(といってもさすがにオチは予想できなかったが)であるにもかかわらず、意外性も感じられた。ただ、「上司にチクる」と脅されただけで、あんなにも取り乱すものだろうか、という疑問は残った。ともあれ、続きのBプロが気になった。
Bプロは、日活のプログラムピクチャーとヌーヴェルバーグに影響された自主制作映画のような(実際自主制作なのだが)ノリの作品。発想や物語は惹かれるものがあるが、率直にいって、それを実現するための技術が足りず、詰めも甘いという印象。というか正直、どこまで本気なのかよく分からない部分も散見された。
三篇ともコンセプトやメッセージは明快。ただし、BプロはAプロにかなり助けられているのではないだろうか……。

*1:桐野夏生作品のもののような。