BORDER コギャルから格闘家へ

BORDER コギャルから格闘家へ ~渡辺久江 終わらぬ戦い~ [DVD]

BORDER コギャルから格闘家へ ~渡辺久江 終わらぬ戦い~ [DVD]

渡辺久江ファンにとっては見逃せない、格闘技ファンにとってはなかなかの、ただしドキュメンタリーとしては少し物足りない──そんな作品ではないだろうか。渡辺のプライベート空間を写した場面は、陽射しがあふれ、どこかのアパートなんだろうけど、露出過多気味の撮影のためか、なんだかセットのように見えてしまい、ドキュメンタリーというよりPVのようで、ちょっと恥ずかしくなってしまった。たとえば「情熱大陸」を見ていると、これはドキュメンタリーというよりドキュメンタリー風のPVだなあと思うことがしばしばあるんだけど、それと印象が似ている。
対象自体が気づいていない「本質」や隠された事実を捉えなければ、それはドキュメンタリーとはいえず、対象が望むものしか撮れないのであれば、それはドキュメンタリーというよりPVにすぎない。「すべての映像はドキュメンタリーである」と考えるなら、「ドキュメンタリーかPVか」など程度の問題でしかないのだけど、自分は一応そう考えている。
その意味では、この作品でもっともドキュメンタリー的な「残酷さ」が見られるのは、勝った渡辺ではなく、負けたしなしさとこを追った場面だろう。しなしは試合前、自分がつねに平常心であることを語っていたが、皮肉なことに、試合後、格闘技人生初の敗北、しかも失神KOという体験に動揺するところを撮られてしまうのだ(音声のみだが)。
ところで、渡辺はこの大一番を前に「わたしが勝たないと女子格はもりあがらない」と言ってのけているのだけど、媒体によって微妙に発言が違っている*1長島茂雄の「我が巨人軍は永遠に不滅です」も実際には「永遠」ではなく「永久」らしいし、名文句は意外に(半ば意図的に)間違って伝えられることが多いのだろうか。

*1:DEEP公式サイトでは「私が勝たないと女子格にあしたはない」(http://www.deep2001.com/25/index.html)。BOUT REVIEWでは「私が勝たないと女子格闘技のブレイクは無い」(http://www.boutreview.com/data/news05/060804deep.html)。スポーツニュース-Headlines-では「私が勝たないと盛り上がらない」(http://www.bodymaker.jp/headlines/2006/06/)。