奥さまは魔女ノーラ・エフロン監督のロマンチックコメディ。テレビシリーズのリメイクを演じるもの同士の恋愛を描くわけだが、「演じる」といっても、主人公自身はやはり魔女、という少し複雑な構造の話。往年の人気ドラマ(ファンタジー)をどう現代劇につなげるのかが気になるが、セットや衣裳(ファレリー兄弟コーエン兄弟の作品の衣裳も手がける人が担当)が凝っていて、色彩はやたらにヴィヴィッド。さすがハリウッドというつくり込みで、それを実現しているようにも見える。ニコール・キッドマンも本当にいろんなことができる。ただし、時間を戻すという魔法はストーリー的に反則じゃないだろうか。

『インベージョン』 共産主義者をエイリアンに見立てたといわれる「盗まれた街」(1955)を原作にした映画。ドン・シーゲルも監督している(『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』)。ニコール・キッドマンはやはり良いが、その他は悪くはないが特筆すべき点も見あたらずといった感じ。精神分析医を主人公にしたところは現代的だけど、今やらなければならない企画なのかどうか……。

『14歳』『ある朝スウプは』の監督のPFFスカラシップ作品。描く世界は少し広がったけど、前作と変わらぬ緊張感、切迫感。これは人を楽しませるというより、視るものに集中して対峙することを要求する作品。それにしても今の中学生はこういう作品のこういう教師像を見て、どう思うのだろうか。「バレエは遊びでしょ?」には殺意を覚えるだろうなあ。

『大統領暗殺』しょせんフィクションでしょ? という疑念が最後まで拭えなかった。

『シッコ』医療制度に詳しくなくても、偏った情報から構成されているのでは?と疑ってしまう作品。ムーアならではの取材力もあまり感じられない。ただし、社会正義のための作品として見るならありかなあ。曲がった棒を矯正するには、逆方向に、はじめの負荷よりも、さらに強い力をかけなければならないと言っているようで、それもどうかと思うんですが。

デス・プルーフ in グラインドハウス減速すればいいのに……と思いつつも、ラストのカーチェイスがひたすら痛快・爽快。ただ、前半の女たちの駄話はちょっと……。某広島娘3人組に演じてみてもらいたいものだが……。

天然コケッコー原作の印象的なエピソードをつないだだけともいえるのに、演出で十分に魅せてくれる。ところどころで、同じ山下敦弘(監督)と近藤龍人(撮影)のコンビによる『くりいむレモン』を想起させる。脚本はそんなに渡辺あやらしくないような。

サッド ヴァケイション『Helpless』『ユリイカ』に続く、北九州サーガの作品。ようは母親に捨てられた男の復讐の話。でも、話になっているような、なっていないような映画で、難しいことをさらりとやっているように見えるんだけど、一度観ただけではコメントしにくい(ここにきて母系制万歳というわけでもないはずだけど……)。少なくとも浅野忠信をはじめとする役者の存在感がふつうではない。斉藤陽一郎だけが妙に浮いている(良い意味で)。僻地に寄り添う、あぶれものによる疑似家族的職業集団を、こんなふうにリアルに描いた現代映画はないだろう。

ロンリーハート50年前のアメリカの陰惨な事件をもとにした映画。……なぜこの時期にこの題材なのか? と腑に落ちなかった。

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』まだなんともいえない。ただ、このままだと旧ヴァージョンよりシンジが少し男らしいような……。