“困った人”をいかに見せるか
『その男狂棒に突き』、予告編からして面白そうでした。刑事にして汁男優の中年男が初めてAVの本番の撮影に挑むという設定は、いくつかの条件が重なったすえに生まれたらしいけど、いいところを突いてますね。そしてこのアイデアに血肉を与えた主人公の「尾崎充」がすばらしい。以下ネタバレ。
“困った人”の困った言動を追うフェイク・ドキュメンタリーといえば、最近では「ガキの使い」のオープニングですっかりお馴染みだけど、『その男狂棒に突き』はキャラクターのインパクトにおいて、まったく引けをとらない。というか、これは「尾崎充」ありきの企画なんでしょうか?
細かい台本はないようなのだけど、言葉のチョイスや言い回し、リアクションが絶妙。ファミレスでの打ち合わせの場面などは、「うわぁ…こういうひと、いるよなあ……」と憂鬱になりそうなくらいリアルです。生理的に受け付けないひともいるかもしれない。ただ「尾崎充」の言動は嘘くさい反面、終始「本気」*1なので、その緊張感も逆に笑いを誘うんですよね。
“困った人”の言動を追う企画といえば、他人に迷惑をかけるひとが対象ではないものの、「働くおっさん劇場」もそうですね。これはあらかじめ構築したキャラクターを動かすというより、どうも、これといった着地点を決めないまま、キャラクターの未知の部分をどんどん引っ張りだすというやり方で成立しているように見えます。そんなやり方に耐えうる、おっさんたちを見つけてきたのもすごいですが*2、「このおっさんで行こう!」という決断もなかなか難しそうです。オーディション場面など選考過程を含む、メイキングがあるならぜひ見たいですね。ところで、この番組はめちゃくちゃ面白いのですが、出演者の人生や背景や頭の中を想像して、ちょっと怖くなることがあります。
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