去年すりきれるほど視た映像


昨年10月、武蔵美の芸祭で行われたミニライヴの一曲目が、この「エレクトロ・ワールド」。同じような体験をしたひとは少なくないようですが、イントロもなく、三人がそれぞれ右手、左足をロボットの歩行のように上下させる瞬間から始まった衝撃が忘れがたく、その晩YouTubeで何度もリピートし、結局DVD付ベスト盤を購入しました。
これは、かわいさとかっこよさが奇跡的に融合した名曲(名パフォーマンス)でしょう。ただし、PVだけでは、このユニットの魅力は伝わらないかもしれない*1。それどころか、一見衒いのないベタな楽曲と、いまさらな近未来的イメージに、白けるひとさえいるかもしれない。たしかにそれは、ある意味、正しい反応だと思います。けれども、その、ちょっと引いてしまうところにこそ、Perfumeの魅力の秘密があるのではないでしょうか。
珍しいことに、Perfumeのファンはアイドルおたくとテクノ好きに大別でき、そのパフォーマンスの完成度とは別に、前者はPerfumeのユルさ、後者はダサさに惹かれているようです。これは自分の印象にすぎないのかもしれないんですが、「ちょっとユルいけど、そこがいい(かわいい)」「ちょっとダサいけど、そこがいい(かっこいい)」という具合に、両者はいずれもPerfumeの未完成度──完成度ゆえに光るわけですが──に親しみを覚えているように見えるんですね。
といっても、前者のような見方は別に例外的なものではなく、そもそもテクノポップユニットとしてどこまで完成されようと、Perfumeはやはりアイドルであり、アイドルでなくなったらPerfumePerfumeといえなくなるはず。つまり、未完成であることはすでに決定されているというか、少なくともどこかでつねに求められているわけです。
伊集院光によると、アイドルという存在は80年代前半、女優でも歌手でもない中途半端なものとして、廃れそうになったけど、小泉今日子の「なんてったってアイドル」という開き直りが、それを復活/延命させたらしいです。どこまでホントかは分からないのですが、少なくともアイドルが洗練された芸を披露する存在というより、もともとそれなりにユルい存在であるというのは容易に納得できることです。
となると、ようするに「ちょっとユルいけど、そこがかわいい」というのは彼女たちの出自からして当然の反応で、むしろ「ちょっとダサいけど、そこがかっこいい」という逆説こそがポイントに思えてきます。これはどういうことなのか……? 「かわいさとかっこよさが奇跡的に融合」といいましたが、かつての「おたくvsサブカル」(土着vs西洋かぶれ)という図式にしたがえば、それはかっこいいものを求めてきたはずの後者の妥協の結果なのか。それともダサいものが一周回ってかっこよくなったのか。
いずれにしても、CDが売れなくなり、モー娘。が求心力を失い、フットサルもさほど盛り上がらない昨今、RHYMESTER宇多丸が「最後の希望」というように、アイドル(ポップス)という「中途半端な」ジャンルの復興はPerfumeなくしてありえないといわれれば、それはたしかにそうかもしれないと頷いてしまうわけです。
ちなみに、広島*2娘といえば『天然コケッコー』のそよちゃんだったはず。今年は映画も公開されますが、Perfumeと潰し合いにならないことを願いたいものです。

Perfume?Complete Best?(初回限定盤)(DVD付)

Perfume?Complete Best?(初回限定盤)(DVD付)