中平卓馬のドキュメンタリー

http://www.cinekita.co.jp/lineup/camera.html
「カメラになった男」というタイトル、うまいすね。中平卓馬の写真は、良い/悪いとか、上手/下手とか、きれい/汚いとか、かっこいい/かっこわるいとか、そういうレベルを超えてしまっている(ように見える)んですよね。じゃあ、どんな写真か。一言でいえば「即物的」かもしれない。でも即物的に撮ってやろうと思って撮っている写真ではないし、そういう狙いが見えるような嫌らしさがない。一見素人だけど、やっぱりどう見ても素人の作品ではない。こんなふうにいうと、誉めているように聞こえるかもしれないけど、正直、こういう色気のない写真を好きというのも、なんだか躊躇してしまう。それはやはり趣味を投影するような見方を拒む写真ということなのかもしれません。
ともあれ、この映画の中平卓馬はとても面白いです。中平は30年前から記憶と言語に障害を抱えているらしく、現在でも、近所で写真を撮ったり、昔の写真を眺めたり、自分がどんな行動をとったかをメモったり、電話で時報を確認して時計を合わせたり、という毎日の作業自体がリハビリになっているらしい。世間一般の常識からいえば「かわいそう」ということになるのかもしれないけど、そんな印象はまったく受けず、むしろ清々しい気分になります。