水野先生とPerfume

ついにというべきか珍しいことにというべきか、「Perfumeの神」のひとり、水野先生こと水野ティーチャーことMIKIKOのコメントが『ぴあ』11月1日発売号に掲載されました。

Perfumeの曲から受け取るイメージは、現在ではなく近未来、有機的というよりも無機質なもの。そんなこともあって、なるべく人間離れした質感を出せるように、所々のポージングや目線をマネキン・人形風にしていますね。
3人のキャラクターからは、頭がいいけど純粋な”コケティッシュ”なオンナノコといった印象を受けます。そのニュアンスを出すために、振り付けの難しさ(ややこしさ)で頭のよさを、少し間の抜けたカワイイ仕草でコケティッシュな女の子を感じてもらえるようにしています。
彼女達のダンスは不思議で独特だといわれますが、それは音のとり方をあえて変則的にして、一瞬見ただけでは分析しにくいようにしているからかもしれません。*1

単純に考えれば、まず、テクノっぽさと女の子らしさをどう融合させるのかがポイントになりそうですが、それだけではなく同時に、間の抜けた感じと分析しにくさを意図的に取り入れ、なおかつ頭の良さも感じられるようにしている、と。ここには3人本来のキャラクターを生かし、女らしさというより、女の子らしさを強調し、性的イメージを抑制しようという狙いも見てとれてますね。
さて、このコンセプトで実際にはどんな振付がなされているのか。今後はもしかすると少しずつ路線変更するのかもしれませんが、これまでの代表的なものをふたつだけ挙げるとすれば、やはり「コンビューターシティ」と「エレクトロ・ワールド」でしょう。名曲には名振付が生まれるものなのか判りませんが、水野先生はこの2曲において、中田ヤスタカが高めてきた楽曲の完成度に応えるように、充実した仕事を残しています。

「コンビューターシティ」は大小様々な円(という「完璧な」形)を描くような旋回運動と要所々々の決めポーズの対比が美しい。ひらひらと揺れを強調するラッフルスカートとの相性も抜群。

一方「エレクトロ・ワールド」は完璧な美しさを描くというより、「音のまま、歌詞のまま動いている!」というインパクトと判りやすさを重視している。個々の動きのバリエーションが豊富で、いちいち面白い。それらをふんだんに詰め込みながら、バランスが壊れてるようにも見えない。むしろ、パンチなどという飾りっけのない動きも、かっこよく見せてしまっている。衣装も調和を保ちつつも、各自の個性を解き放とうとしていることが伺える*2
ただ、今回は『QJ』のPerfume特集に欠けていたコメントが補完されたともいえますが、水野先生とPerfumeの関係は未だ十分に語られているとはいえないでしょう。そもそも、アクターズスクール広島時代から師事しているというので、時間的には、Perfume中田ヤスタカよりも水野先生と長い付き合いなわけです*3。もっと曲ごとの分析・逸話や背景について訊いてみたいところ。たとえば、ちょっと細かい話ですが、上のふたつの傑作はいずれも、他のふたりよりも中性的で、しかも掴みどころのないのっちが冒頭のセンターを担当していますが、その決定は水野先生によるものなのか? 今秋、ワンマンツアーで披露された「Perfumeの掟」において、水野先生は選曲・振付以外にどこまで関わっているのか? 逆に「Perfume論」をテーマにしたこの演出に、Perfume自身はどこまで関わっているのか?
ちなみに「Perfumeの掟」の選曲はこんな感じらしいです。2ちゃんねるの名無しさんに感謝。

  • JUSTICE「Stress」(衣装替えタイム)
  • Digitalism「Echoes」(「Perfumeの掟」の連呼)
  • Harry Choo Choo Romero「What Happened」*4
  • ?(足の角度は完璧に)
  • Calvin Harris「This Is The Industry」(サンプリングのみ)
  • MIA「XR2」(大人の事情で)
  • ?(30秒以内で答えなさい)
  • Vanity 6「Make up」(キレキレダンス)
  • Perfume「エレベーター」(インスト、衣装替えタイム)

椅子を使ったダンスはROSASが元ネタ? もっと似ているのがあるんですが、たとえばこのあたり。

*1:http://d.hatena.ne.jp/aerodynamik/20071101より

*2:ちなみにPerfumeの衣装は「リニアモーターガール」の試行錯誤を経て、「コンビューターシティ」で「“コケティッシュ”なオンナノコ」という新しいスタイルを見いだし、「エレクトロ・ワールド」ではさらに一歩進み、のっち→パンツ、かしゆか→ショートパンツ、あ〜ちゃん→ワンピースという具合に、それぞれのキャラもはっきりと区別するという、現在にいたるまでのスタイルを確立しているように見えます。どうも、この変化はそれぞれの私服の好みと微妙に連動しているようですが、いずれにしても、それは「Perfume=飾らない素のアイドル」というイメージと無関係ではないように思えます。

*3:Perfumeの振付は3曲を除いて、すべて水野先生が担当しているとか。

*4:http://www.mosdownload.com/mp3-detail/Harry+Choo+Choo+Romero/What+Happened/Slip+n+Slide/188568