小林賢太郎プロデュース公演「PAPER RUNNER」

小林賢太郎プロデュース公演「PAPER RUNNER」@本多劇場ラーメンズよりもラディカルさが控えめな、ウェルメイドで大衆受けしそうな公演だった。個性豊かな面々がある危機をきっかけに一致団結し解決にあたるという一種の成長譚。物語全体にフリとオチがバランスよく対応した笑いが、ほどよく(まんべんなく?)まぶされている。物語の円滑な進行を優先するために、そういった過剰でも不足でもない適度な濃さの笑いになるのだろう。といってもこのような舞台においては、それによって一定のテンションを保ちつづけることが、じつは一番大変なのかもしれない。特徴的なのは、ドラマが進むにつれ、主要な登場人物のキャラや設定が変化するところ。その手付きがいかにも小林賢太郎らしい。ただ、ラーメンズ経由の客にとっては、それほど意外性は多くないだろう。また、若干違和感を覚えてしまうのは、小劇場特有のノリがあまりに自然なところ。それって、野田英樹(夢の遊民社)や鴻上尚史第三舞台)あたりで確立されたのだろうか。本公演もじつは意外に80年代的なのかもしれない。
ところで、ラーメンズ絡みのものはビジュアルも洗練されていることで知られているが、今回のチラシも面白い。講談社のビルをバックにした写真を全面に使っており、よく見ると配置されている人物がほぼすべて出演者であることを確認できる。一見恐ろしく精巧なジオラマだが、たぶん実写。ちなみに長塚秀人が同じような視覚効果を活かした作品を発表している(レントゲンヴェルケで個展開催中)。