描けすぎるアイドル、中川翔子

絵でネタを展開する芸人が最近増えたような気がする。鉄拳はその筆頭だろうか。草分け的存在として、いつもここからも挙げられるだろう。たしか昨年だったと思うけど、「テンパイ」という深夜番組があって、若手芸人にネタをやらせたり、デビューしたばかりのアイドル(の卵?)に自己紹介をかねてゲームさせたりなんかして──と書くと適当だけど、ホントそんな感じなので──遊ばせるという体裁をとっていた。ようするに笑いとエロの二本立てで勝負する番組で、珍しくふかわりょうが司会をつとめ、少しアップアップしたその仕切りも見どころのひとつだったはずだ。しかし、哀しいかな、次第にふかわを除く芸人たちの露出は減少し、ほとんど無名のアイドルたちが曖昧に笑顔を見せる場と化していった。
そんななし崩し的な、お色気路線への変更をよぎなくされたという意味で、よくある深夜番組のひとつだったのだろう。だが、初回からの視聴者は、一瞬のきらめきをたしかに目撃したにちがいない。それはサブ司会者ともいうべき立場にあった、いつもここからのコーナーでの出来事だった。
そこでの狙いは分かりやすい。おそらく彼らの存在を世に知らしめることとなったネタ「悲しいとき〜」「悲しいとき〜」のオチを、アイドル五人それぞれに描かせ、その(かわいい)素人っぷりをツッコんだ後、「それでは」と満を持して、プロの手本を披露するという趣向である。案の定、伝えたいことと絵のギャップをことごとく指摘され、かわいくごまかすアイドルたち。しょうがねえなあと笑ういつもここから。予想通りの展開だ。そんな昼休みのひとときのような、ほんわかした空気を一変させてしまったのが中川翔子だ。できれば彼女のルックス(http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C3%E6%C0%EE%E6%C6%BB%D2)を見てから、絵(http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Spotlight/2422/illust/01.html)にアクセスしてほしい。他の四人とは比べるべくもない表現力とインパクト。これは笑いと恐怖が表裏一体となった楳図かずお作品の本質にも迫るものではないだろうか*1。スタジオに戦慄が走り、どよめきと爆笑が広がるなか、すっかり喰われてしまったと感じたのか、本家本元の二人が手本を見せるのをためらっていたのが印象的だ。
こんな「地雷」が隠されていたことを、スタッフがあらかじめ知っていたのかどうかは分からない。キャラクターと技量的には中川翔子中心のコーナーとなってもおかしくないのだけど、いろいろとオトナの事情もあったのだろう。その後、残念なことに、とくに中川に光があてられることもなく、しばらくしてこのコーナーは消滅した。しかし振り返ってみると、まさにあのとき、中川のためのお膳立てが、すっかり整えられていたような気もするのだった*2

*1:そういえば、そもそも中川自身、楳図漫画に出てきそうなキャラクターだ。

*2:ちなみに外見と絵のギャップといえば、氷川きよしも激しいことは知られているのだろうか。以前、たまたま日本テレビの「FUN」で目撃したのだけど、そのサイコでオカルティックな図柄には思わず身を乗り出してしまった。隣にいた今田耕司が、氷川が手にしていた絵をあわてて伏せさせ、周囲を伺い、人目を気にするフリをしながら「自分、こんなん、ひとに見せたらあかんで……」と耳打ちするというオーバーなリアクションで笑いにしつつも、引いていたといえば、それがいかに演歌界の貴公子・氷川のさわやかなキャラにそぐわないものだったかを分かってもらえるかもしれない。もう一度見たい……。