「WORLD DOWN TOWN」がヤヴァイことになってきた

ダウンタウンが久しぶりに深夜番組をやっている。「WORLD DOWN TOWN」(ワールドダウンタウン http://www.fujitv.co.jp/b_hp/wdt/)という人を喰ったタイトルから想像できるように、欧米のヘッドラインニュース番組を真似たものだ。未見のひとのために説明すると、出演者は司会の男性キャスターと男女のコメンテイターの欧米人三人、そしてゲストコメンテイターのダウンタウンという構成。サブタイトルは「WIDE HEADLINES NEWS」。世界各国で取材したVTRを紹介し、スタジオであれこれ論評するという体裁をとっている。
ただし、取材先はこれまでのところ、たしかタイとフィリピンだけで、現地レポーターはまるで素人。取材のテーマはともかくオチはグダグダ。にもかかわらず、スタジオの欧米人有識者たちは、それをとても一方的かつ好意的に解釈して盛り上がる(VTRなど観てなかったといってもいい)。一方、その一部始終をぶつくさと苦笑しながら眺めていたダウンタウンの二人は、ようやく発言を求められると、諭すような調子で「(番組として)成立していないですよね?」とマジメに苦言を呈するのだが、その主張はまったく理解されず、それどころか逆に「困ったもんだ」という具合に肩をすくめられしまう。二人は、東南アジア人のレポートにはもちろん、欧米人のコメントにも違和感を表明するのだが、最後までそれを解消できず、あげくのはてには話をズラされ、好奇心丸出しで「ニッポンのゲイニン」として無理難題(一芸)を要求され、まんまと遊ばれ(イジられ)てしまうというわけだ。
つまり、この番組にはいわば、よその家で、よそものあつかいされるものの、そのまま無理矢理、遊びに参加させられ、こちらの意に反して結果的に大いに喜ばれるという、著しい温度差、なんとも厄介な疎外の構造がある*1。言い換えれば、欧米人三人にしてみれば、大人の立場で子供の遊びに面白がってつきあうという構図なのかもしれないが、ダウンタウンにしてみれば、それは、むしろ逆で、戯れてくる子供にいやいやつきあうといった構図なのだ。そう考えると、二人がいったいどんな理由で、あのニュース番組に出演し続けているのかという設定の根本が気になるところだ*2
ともあれ、以上のような次第なので、番組上不可欠かつ最大の売りとなっているのが、日本語の同時吹き替えだ。日頃耳にする日本語のアテレコの、なんともいえない不自然さは、日本人ならだれもが知っているだろう。「WORLD DOWN TOWN」がユニークなのは、その不自然さを利用しただけでなく、吹き替えがアフレコではなく、同時収録であることだ。終始、操り人形のごとく扱われているとはいえ、おそらくアドリブが許されているのはダウンタウンの二人だけで、また、もちろんこれは生番組ではないのだけど、ここに、外国人とダウンタウンとのリアルタイムでの日本語の掛け合いという、ありえない事態が実現してしまったのである。このような演出をはっきりと打ち出したのは、ひょっとして日本テレビ史上初なのではないだろうか?? いずれにせよ、いったいどこで見つけたのかといいたくなるキャスティングも絶妙で、とくに司会のジル・ベッソンの表情やジェスチャーはケッサクだ。
番組の放送はこれまでで十回くらい。当初はきっちりと定型を反復していたのだが、それも徐々に壊されつつある。昨夜の展開はいよいよ常軌を逸してきており、久々に思わず声をあげて笑いそうになった(深夜なので我慢した)。今後の展開がますます楽しみだ*3

*1:ダウンタウンはたしか、差別や疎外感を意外にしつこくテーマにしている。たとえば「トカゲのおっさん」はそれらにもっとも自覚的で、それゆえ自虐的に振る舞うというキャラだった。

*2:そもそも冠番組なのにゲストに徹しているところがオカシイわけだけど。

*3:内容を再現しているサイトがありました。http://www.geocities.jp/downtown_kenkyujo/world.html