木村祐一とキレてみよう

血液型で性格が分かるかというといささか疑問ではあるものの、同じ血液型の人間に秘かにちょっとした連帯感をもつのがAB型の人間であるのはたしかだと思う。「何型?」「AB」「あ、オレも」「へえ」と冷淡な態度を装いつつも、彼らのあいだには、それだけで、他の血液型同士では生まれようのない、何がしかのシンパシーが生じているのだ。かといって、それをきっかけに一気に仲が良くなったりするわけでもないのが、AB型の難しいところなのだけど。
倉本美津留木村祐一千原浩史が出演する「第1回元クラウディーズ公開録音」@ルミネtheよしもと(2004年6月19日)は血液型トークを絡めつつ始まった。そもそも元クラウディーズとは一昨年より始まった、ジャンルにとらわれない即興の笑いを生み出すことを目的にしたラジオ番組のためのユニットであり、好評のため、今回のように公開録音されることになったらしい。そしてこの日は、ぶっつけ本番の作品収録までのウォーム・アップといった体で、巷で流行っている──というか、いつまでも流行っている血液型の話題などでギアが上げられていったのだ。
そのときO型の千原が「目くじら立てっぱなし」と槍玉にあげたのが、AB型の木村の日ごろのキレ方。
 例1(ある店内で仲良さげに手を振って別れる男女を見て)木村「土曜の夜10時にカップルが別れるかあ?」千原「明日、仕事かもしれませんやん……」
 例2(わナンバーの軽自動車を見て)木村「レンタカーで軽(けい)に乗るかね!?」千原「それはええですやん。よう見たら乗ってるの二人だけやし……」
千原はあえて、何事も丸くおさめるO型らしく(?)振る舞い、やんわりと非難することで、木村の神経質なキャラクターを浮き彫りにするのだけど、三つの作品を収録した今回の録音の最後の作品「どうして泣いてるでしょう」は、そんな木村の観察力がいかんなく発揮された逸話といえるだろう。千原にせがまれ、独演として披露された自動車販売員菊地キクチの話は、ほとんど感動ものだった。スパイスの効いた小さな笑いを織りまぜつつ、淀みない語り口でロジックを積み重ね、一滴の水漏れも許さず迎えたクライマックスに、怒りを爆発・解放させるカタルシス。円熟味さえ感じさせる切れ味と、一転して人の道の大切さを説く泣かせるオチは名作落語も連想させた。木村は『キムラの目』所収の「上手なキレ方講座」で次のように語っていた。
「相手をなぜかさわやかな気持ちにさえさせてあげれるようなキレ方、この域に達すると、それはもう、芸術なのである」
キレることは気持ちいい。上手にキレることは世のためにもなるのであった。