「あいくるしい」第二回(4月17日放送)

主人公・真柴幌はやはりちょっと頭が弱いように見える。実際、母親は幌が発達障害ではないかと心配していたことを仄めかし、あまり勉強はできないものの、「まともに」育ったことに安堵している。ただし、泣くことがない──そしてどうやら、怒ることもない──というのは、やはり普通ではない。もっとも幌自身は、そのように感情表現、感受性が他人と違うことを悩み、祖父に相談したりはする。
今回、幌というキャラクターの特徴である間抜けさ/人の良さは、自分の塾の月謝を盗まれる現場を目撃しつつも、その場では追及せず、その後、「紛失した」と町中を無闇に探し回るふりをするという行動に表れていた。犯人の同級生・坂巻奈々は月謝袋を堂々と届け出て「盗まれるほうが悪い」と嘲笑するが、幌は奈々が名乗りでてくるのを待っていたのだ*1。何もかもを理解した奈々は「バカにするな」と逆ギレするが、幌の人の良さに結局癒される(?)ことになる。幌は前回も万引きの濡れ衣を着せられながら一言も弁解しなかった。こうした私利私欲を超えた性格が、今後どのように肉付けされていくのか、つまり幌をどう成長させていくのかが気になるところ。
また、今回は重要な小道具が登場した。幌の祖父・真柴明示(杉浦直樹)の小学生時代に埋められたタイムカプセルが開封され、七つのビー玉が現れる。それをプレゼントされた幌は、信頼できる人間に一つずつ譲っていくことにし(今回は奈々に一つ渡された。)、そうした行動を「世界を救う」という計画の一環であると考えているようだ(『里見八犬伝』の逆パターン?)。
一方、今後徐々に登場場面が増えるであろう母親(原田美枝子)は死を覚悟していることが明らかになった。「家に帰らせてください」と懇願された父親(竹中直人)は「そんなことできるわけないだろ」と逃げ出すように病院を後にする。子供たちの演技は良くも悪くも危なっかしいけど、この二人の場面は安心して観られる。やはりクライマックスは彼女の死なのだろうか。
ところで、このドラマではときおり挿入される幌のナレーションが不思議な印象を残す。たしか、伝聞調だったり、回顧調だったりする。今回はとくに、タイムカプセルを掘り出すときの「何を埋めたのか憶えてない」という祖父の告白を受けた、「ぼくもいつか忘れてしまうのだろうか」という語りが、なにやら思わせぶりだった。
いずれにしても、焦点はまだそれほど絞られていない。今のところ、期待が七割、不安が三割という感じかな。

*1:とはいえ、そもそも盗まれていることを知りつつも町中を歩きまわるという演出は分かりにくい。