「SEX and the CITY」の好感度

セックス・アンド・ザ・シティ シーズン 1 [DVD]このシリーズは「アリー my Love」の人気に乗じて始まったという話をどこかで聞いたことがあるのだけど、「アリー」とは異なり、語りの視点は女に限定されている。主人公キャリーは30代前半の独身女性コラムニスト。ニューヨークの性(恋愛)事情を等身大の視点で語るコラムを週刊誌に連載中で、そのネタになるエピソードを一話30分のドラマとして見せるという趣向。他愛のない話ばかりだけど、無駄がなくじつに見やすい。自宅で食事するたびに、シリーズ1(season1)を途中まで少しずつ囓ってみた。タイトルはこんな感じ。

  • NYセックス事情 Sex and the City
  • モデルにハマる男たち Models and Mortals
  • シングルでなぜ悪い!? Bay of Married Pigs
  • 20代男との事情 Valley of the Twenty-Somethings
  • 女の魅力こそが武器 The Power of Female Sex
  • 秘密の関係 Secret Sex

このまま雑誌の見出しに使えそうだ。また、このドラマでは「ニューヨークの女は……」みたいなフレーズが頻出する。この「ニューヨーク目線」は、日本では「『NIKITA』目線」とでも考えるべきだろうか。実際、ファッションも大きな見所になっている。ようするに問題は、ある程度、金と力を手に入れた女にとっての快楽のあり方。ただし、もちろん、それなりに進歩的で成功した女たちがたんに遊びまくって自由を謳歌するだけのオチのない話ではなく、その代償がいかに支払われるかという描写でバランスをとろうとしている。つまり、やはり他愛ないといえば他愛ない話ではあるが、このドラマはおそらく、男化した/しつつある女にとっての快楽と幸せとの関係という今どきのテーマに支えられている。
たとえば、以前遊ばれてしまった男と再会したキャリーは、事情を知るゲイの友人の警告には耳を貸さず、その男を積極的にベッドに誘い、自分本位に振る舞うことで、男みたいに(身勝手に?)セックスできた!と一人悦に入るのだけど、結局、自己嫌悪に陥ることになる。おいおい……、という感じだけど、彼女には一方、本命の男がいて、物語としては、それがなかなか「本当の恋」には至らず、いろいろと寄り道する過程が描かれる(本命の男がいるのに他の男と寝たり、また、本命の男とは(気合いが入りすぎて?)初デートで寝てしまい、これまた後悔したりする)。
「寄り道」と言ってしまったけど、寄り道になるのかどうかは、最後まで観なければ分からない(最後まで観ても分からないかもしれないが)。ただ、なんだかんだいって最後には幸せな結婚(ハッピーエンド)が待っているのかもと期待させるという意味で、性についての明け透けな会話が話題になるこのドラマも、案外保守的といえそうだ。たしかに、「結局、女の幸せは結婚だろー」みたいな暗黙の了解や意地の悪い見方に屈しなければ、試みとしては面白い。が、一方、一視聴者としては、キャリーには「ふつうに」幸せになってもらいたいという、他愛ないといえば他愛ない願いを、ついつい抱いてしまうのだ……(笑)。
このような印象はようするに、性的にはリベラル(開放的)ながら、やることはちょっと不器用というキャリーを演じる、サラ・ジェシカ・パーカーの喋り方や仕草などから来ているのかもしれない。彼女は実際には落ち着いた実直な人柄らしい。そういう配役の妙も人気につながっているのかなあ。