コミックバトン〜『ドラえもん』第7巻

はじめて買ったのは『ドラえもん』7巻です。当時320円くらい。とはいえ、小遣い一か月分だったので、とても慎重に選びました。それにしても、なぜ7巻なのか?
まず、そのころの自分には、そもそも1巻から揃えるという発想がなかったのです。しかも、同シリーズはすでに17巻あたりまで発売されていましたが、今後、自分の経済力で全巻を揃えるのは、かなりの禁欲を強いられるだろうという、恐れというか悲しい認識もあった気がします。また、このシリーズは一話完結形式で、いわゆる「続き物」ではないということも知っていました。おそらく、そんなわけで「どうせならカバーがいいものにしよう!」と考えたのでしょう。
てんとう虫コミックスの『ドラえもん』のカバーは大人になって眺めてみても、構成といい、色づかいといい、とてもポップでかっこいい。タイトルロゴも素晴らしい。近年の漫画・アニメの作画レベルや、ベジェ曲線の均一さに慣れた眼で見ると、キャラクターの描線が意外に粗いことに驚きますが、にも関わらず、未だにかっこいいデザインに思えます。ここ十年くらいでコミックの装丁にもデザイナーの名が記されるようになったようですが、最近発売されている『ドラえもん』も同様なのでしょうか? 今度チェックしてみたいです。
子供にとっても『ドラえもん』シリーズは所有欲を刺激するもので、その後、僕は1巻から徐々にすべてを集めだし、紅茶か何かが入っていた、わりと立派な紙の箱をリサイクルした本棚に、飾っておくようになりました。当時の父親には、僕の就寝後、そこから勝手に任意の一冊を抜き出し、眠りに落ちるまでそれを読む習慣がありました。子供はだいたい父親より先に起きるものですが、僕は朝、所定の場所ではなく、眠りこける父親の枕元に『ドラえもん』があることに、憤りを覚えたものです。
ところで「なぜ7巻なのか?」ですが、ようするに7巻はドラえもんがたくさん描かれているんですね。今、見ると他の巻に比べるといささか中途半端に思えるかもしれませんが、当時の僕にはかわいかったし、しかもこれまた貧乏くさい話ですが「お得」に思えた。「買うならコレだ!」。会計に向かうときは「“ラッキー7”ていうし!」みたいに自分を言い聞かせていたような気もします。
ところが、愛読者はご存じのように、『ドラえもん』が「続き物」ではないというのは正確には間違いで、一度終了しているんですね。ドラえもんは6巻最終話で未来に帰り、7巻の第一話でのび太のもとに戻ってきます。「その間、連載は中断されていたのか?」とか「本当にやめるつもりだったのか?」など、諸事情が気になるところですが、ともあれ『ドラえもん』は続行され、現在では『サザエさん』同様、終わりなき物語として扱われ、ときおり都市伝説的に最終回が噂されるようになったりしている*1
ドラえもん (7) (てんとう虫コミックス)けれども当時の僕はそんなことはつゆ知らず、早速7巻を読み始めた。「『ドラえもん』なのにドラえもんが出てこない。なにかおかしいぞ……」子供ながらに勘が働くものの、いまさらページをめくる指を抑えることなどできるわけもなく、オチにいたり、愕然とするわけなのです。「ウソ800」が手許にあったなら「ボクは今、7巻を読んだ」と言ったかもしれません。
漫画についてはいろいろ書きたいですが、いったんここまで。つづく(かも)。*2

*1:実際には三つの最終回があるとのことです。「ドラえもん最終回解説」参照。

*2:以上、id:yamauchikazuyaさんからいただいたバトンにお応えしています。フォーマットをほとんど無視していますがご了解を。