続コミックバトン〜思い入れのある漫画

さて、その後は御多分に漏れず、『少年ジャンプ』を愛読するようになりました。『キャプテン翼』ブームでつくられた少年サッカーチームで、滝気分でライン際をドリブルしたり、翼気分でゴール前の岬君気分の仲間にセンタリングしたり、あるいは『少年サンデー』に浮気して『タッチ』にドキドキする一方、結局『北斗の拳』ごっごしながら下校したりしたものです。まあ、そもそも『タッチ』ごっこは難易度が高いです。
しかし高校に入学すると「大人にならなきゃ」という焦りが生まれたのか、それともたんに部活動で忙しかったのか、ほとんど漫画を読まなくなります。漫画に関する記憶は『ビー・バップ・ハイスクール』くらいしかありません。代わりに多少読むようになった小説(というかニューアカ)を経由して遅ればせながらニューウェーヴの洗礼を受けています。高橋源一郎が紹介していた『童夢』と『絶対安全剃刀』に「漫画ってこんなにリアルなのか、こんなに自由なのか」と衝撃を覚えました。当時、ほかには、予備校の講師に教えてもらった杉浦日向子百日紅』や、四方田犬彦が紹介する岡田史子作品集にシビれたりしています。ちなみに、両者は最近亡くなってしまいましたが、訃報を聞いたときは、残念ではあるものの、近年ほとんど漫画を描かれてなかったこともあり、僕の中ではすでに過去の漫画家になっていたことに気づいて、そっちのほうが少々ショックでした。まあ、ファンはとことん自分勝手なのだと思います。
大学入学後は時間的にかなり余裕ができたので、友人の影響を受けたりもしつつ、往年の名作をはじめ、ガロ系や少女漫画など、いろいろ読みあさりました。
……ここまで書いて、自分の漫画人生はホント凡庸で、とくに記しておくべきことなどないのではないかと疑問になってきました。というか漫画体験など、だれであろうと、時代的に似たりよったりになるのかもしれません。なので、もったいぶらずに、好きというか思い入れがある三つを挙げるなら『デビルマン』『漂流教室』『わたしは真悟』になります。「ひとり漫画夜話」をやりたいくらいです。あと二つというなら『あしたのジョー』と岡田史子かなあ。『バタアシ金魚』や『カイジ』も捨てがたい……。
挙げていくとキリがないのでやめますが、ちょっと気になるのは、自分にとって重要な作品はいずれも十代終わりから二十代前半に読んだもので、今後はここまで自分を揺さぶるような作品とは巡り会わないのかもしれない、ということです。正直それはたしかな予感でもあり、考えるとちょっと鬱になります。いや、わざわざそんなことを考えること自体、奇特ですが。
デビルマン (5) (KCデラックス (439))いずれにしても、いつ読んでも面白い作品がある一方、子供のころ夢中になったのに、今では読むに耐えないものは少なくないということもあるでしょうし、一般的にも「いつ読んだか(出会ったか)」はわりと重要ではないかと。いい歳したオッサンが『ドラ○ンボール』に夢中になりメシ抜きで全巻読破してたらたぶん退くでしょう*1。『ド○ゴンボール』に思い入れがあるのは全然かまいませんが、この作品などはやっぱり、一体いつ出会ったかが問われる気がします。うーん、そう考えると「三十歳までに読みたい漫画」などの特集が組まれるのも当然なのかな。そんなガイド自体、鬱陶しく思うひとがいる一方、たしかに需要もありそうです。そういえば、最近、デザイナーのG氏が少年時代、『少年マガジン』で連載されていた「デビルマン」を「ションベンちびりそう」になりながら読んでいたという話を聞いて、それはそれで、なんだか羨ましく感じたものです。とはいえ別に早めに読まなければならないと考えているわけではなく、実際、僕は機会さえあれば、親にだって『デビルマン』を薦めてみたい。と思ったけど、それはやっぱり無理があるか……。つづく(かも)。

*1:温かく見守りたいものですが。