スケボー映画『ロード・オブ・ドッグタウン』

http://www.sonypictures.jp/movies/lordsofdogtown/index.html

ロード・オブ・ドッグタウン コレクターズ・エディション (初回限定生産) [DVD]スケボーシーン(ブーム)が形成されるプロセスを内側から描いている。この映画の前半に登場する70年代半ばの大会は、まだ、フィギュアスケートのように披露された演技を、優雅に楽しむ雰囲気が漂っている。そこにZepherの連中が殴り込むように参加。サーフィンの延長線上にあるパフォーマンスで、観客と審査員の度肝を抜く。Zepherの少年たちはその後、このような大会だけでは飽きたらず、ボードを提供してくれるチームのボスのおっさんの目を盗み、さらに自分たちのスケボーを競うようにして追究する。少年たちは、海から始まる遊び場を、路上へ空き地へと次々に開拓し、ついには豪邸に忍び込み、空っぽのプールをボロボロにするまで滑りまくり、ときに警察犬に追われながら、新しい技を開発していく。楽しいことをひたすら貪欲に求める姿勢がすばらしい。
さて、この映画は基本的に疾走感あふれる、やんちゃな男の子の青春映画なのだけど、文化史的に見ても面白い。新しい文化は、なぜ/どのように、生まれるのか。ドキュメンタリー映画『DOGTOWN & Z-BOYS』は『ロード・オブ・ドッグタウン』の世界を理解するために必見。というか後者はほとんど前者を下敷きにしている。ただし、ここでも、Z-BOYSがなぜスケボーの新しいスタイルを生みだしえたのかはわからないままだ。それは当事者にしてみても、いくつもの偶然が重なり、結果としてそのようになったとしかいえないような出来事だったというべきなのだろう。もっとも、このふたつの映画はZepherによるZepherのための作品といえなくもなく、もしかすると歴史的事実については都合よく書き換えられている部分もあるのかもしれない。ともあれ、『ロード・オブ・ドッグタウン』はエクストリーム系スポーツの映画として、画期的な成果となっているのではないだろうか。

Dogtown & Z-Boys [DVD] [Import]

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ところで、一方、当時の日本はというと、もちろんプール付き豪邸などほとんどないから、あのようなスタイルなど生まれようもない。そもそも、あのようにランプを使う(つくる)なんて情報も発想もなかったのではないか。少なくとも80年代前半の駒沢公園フィギュアスケート的スタイル*1を楽しむのどかな雰囲気だった気がする。Z-BOYSのようなスタイルが日本に紹介されたのはいったいいつなのだろう? 情報格差は埋まりつつあるのだろうけど、アメリカはやはりまだまだ遠い外国だったのだろうか……。ということで、個人的には、子供のころスケボーを愛好していたので、アメリカ(ドッグタウン)との違いに、今さらながらショック(遅れてきたカルチャーショック)を受けてしまった。

*1:『DOGTOWN & Z-BOYS』ではたしか「classical style」と解説されていた。字幕では「垂直スタイル」だったかな。ようするに基本的に垂直の姿勢をあまり崩さないということ。