村上隆とナルミヤの和解をめぐる話について

「マウスくん」訴訟で和解=ナルミヤが4千万円支払い−東京地裁
 子供服メーカー「ナルミヤ・インターナショナル」(東京都港区)のキャラクターをめぐり、現代美術家村上隆さん(44)が著作権を侵害されたとして、同社を相手に損害賠償などを求めた訴訟は24日、同社が約4000万円の和解金を支払うことで、東京地裁で和解が成立した。
 村上さんは2004年7月、自分がつくった「DOB(ドブ)君」が、ナルミヤのキャラクター「マウスくん」に似ているとして提訴した。 
時事通信) - 4月24日

以下関連リンク。

村上隆はたしか、ここ3、4年、つまり欧米現代美術界への本格的進出を機に、「オリジナル」の重要性を強調するようになった。町山智浩の批判と東浩紀の戸惑いは、この「オリジナル」という概念を共有してないところから来ているのではないだろうか。という僕も正直なところ、村上氏のいう「オリジナル」がなんなのか、いまいちよく分からない。ただし、少なくとも推測できるのは、氏の作品はしばしば(オタクたちによって?)「パクリ」と批判されるのだけど、その「パクリ」は氏のいう「オリジナル」と対になる概念ではないということだ。誤解を恐れずにいえば、ようは「パクリといってもそれぞれで、オリジナルなパクリ方というものがあるだろう」(アートはパクリの歴史でもある)と。
また、この手の議論にはしばしば「オタク文化を知らない欧米人を相手に、裏でオタク文化を搾取している」という批判が出てくるのだけど、そのたびに不思議に思うのは、欧米アート界が簡単に馬脚をあらわすような表現を認めるわけがないではないか、ということだ。単純な話、何に価値があって、何に価値がないのかというヒエラルキーが崩れてしまえば、欧米アート界は大損害だろう。裏を返せば、一種の信仰ではあろうものの、そのようなヒエラルキーこそが(欧米の)アートであって、そこに食い込もうとする他者は、さまざまな局面で、もれなく厳密に査定されるに違いない、と思うのだ。ただし、村上氏はそのような査定の現場について、なぜか、あまり積極的には語っていないようだ。まあ、企業秘密といえばそれまでだけど、以上のような現場へのアプローチ、現場でのプレゼンテーションの経験やノウハウはそれ自体興味深い。本にすれば、つまらない誤解は解けるかもしれないし、そもそも売れると思うのだけど、それはまだ先の話だろうか。
ところで、そもそもDOB君とマウスくんはよく似ているけど、ミッキーマウスドラえもんとはそれほど似てないと思うんですが……。